肩関節の脱臼は脱臼の中で一番多いといわれています。他の関節と比べ、骨頭を納める関節窩が小さく外れやすい構造をしていて、常に筋肉や靭帯などに依存しているからです。
原因としては、後ろへ転倒した時に手を突いて発生する場合、腕を外側から挙げるときにてこの原理が関節に働いて脱臼してしまう場合、時には野球などで投球動作の際の筋力によって脱臼することもあります。
症状
症状は肩関節が空虚になったり、上腕骨頭が通常よりも内側にあったりしますが、何よりも持続的な疼痛があります。歩行でも痛むので患者さんは健康な手で支えて来院します。
脱臼は早めに元の位置に、レントゲンが必要
この痛みは整復しなければ治まりません。整復するためにはレントゲン検査が必要になります。
整復の方法は数々ありますが、ゼロポジションやスティムソン法など比較的に愛護的なものを選択して行います。整復後は固定して再びレントゲン確認してもらいます。しっかり整復できているのなら肩の関節を内旋位で保持し3週間くらい固定します。
ですが、肩関節前方脱臼は骨折(大結節や関節窩)の合併も多く、筋緊張が強すぎて整復ができないときもあります。その場合は整形外科を紹介させて頂きます。
反復性脱臼になりやすい
一旦肩関節脱臼が起こると将来的に反復して起こることがあります。
これは脱臼時に関節窩というおわんの一部が欠けてしまっていたり、関節周りの靭帯が部分断裂してしまっているためだといわれています。
この場合肩回りの筋肉を地道につけていき再脱臼を防ぐことをお勧めします。
余談
この脱臼の場合の固定肢位は内旋固定と外旋固定があります。歴史ある方は内旋固定です。
内旋固定は気を付けをして手をお腹にあてた状態で固定する肢位で外旋固定はお腹ではなく反対に外側に開いた状態で固定する肢位です。そういう固定具も探せば売っています。
十数年前に私がまだ右も左も分からない1年生の頃、先輩に違う!外旋位固定だろ!と怒鳴られて分からないながらも自分で調べた記憶があります。教科書では内旋位固定しかかいてないのに、なぜ外旋位固定を怒鳴り主張するのか分からずだいぶ困惑しました。
やっと見つけだしたのが当時の最新の整形外科雑誌に載っていたのですが外旋位に固定すると脱臼の際に欠けた肩関節の関節唇の欠片が外旋することで肩甲下筋が欠片を圧することでくっつき安くなるというものです。よってくっつく可能性がアップすれば手術のリスクの回避にもつながるから前衛的だというものです。
これは怒鳴られたかいがあったと思いきや、2年後くらいにその統計は間違えていましたという論文が発表されました。外旋することによって肩甲下筋が伸ばされてそれと一緒に欠片があるべき場所から更に離れてしまうのでくっつきにくいということです。まったくの逆の結果になってしまいました。
結果的には怒鳴られ損でしたので、私は迷ったら歴史ある方を選ぶようにしています。
外旋位固定ではぶつかりやすいため固定期間にモノや壁などに当たってその衝撃でうんぬんかんうん起きてしまう可能性もありますし、なにより当事者が外に開いた腕が邪魔になるので大変だと思います。内旋位固定ではそういうことは非常に少なくなり固定された側は楽です。
少し前にまた外旋位固定の学生を見ましたが、また流行っているのでしょうか。確かに外旋位固定はそのメリットが正しければ前衛的ですが、内旋位固定も間違っていないし悪い固定方法じゃないと思います。
もし他の疾患にも興味があればこれらのブログも参考にしてください。
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